1986年に建築家ガウディーの作品サクラダファミリアに初めて出会った。
私の建物に対する観念が頭の中で崩れた、それ程浮世離れしていた。
「有機体が造形の模範であり、美しい造形は構造的に安定している」
ガウディーの建物に対する基本哲学である。
有機体をモチーフに曲線とディテールの装飾を多用し、
装飾の集合体が結果として壮大な建物を完成させる。
私は、過剰な装飾の多用性にそういった印象をもたずにはいられない。
ガウディー設計の建物、未完のサクラダ・ファミリア教会、
グエル公園、カサ・バトリヨカサ・ミラの外壁のディテールは滑りを感じ
血管・内蔵・骨を連想させ、爬虫類的もしくは、両生類的な感触と
異次元的な世界観も含み、万代不易の力強さを感じる。
今回私は、ガウディー独特の個性的な色使いを省き、
視点を有機体の造形、構造、ディテールに絞り、
モノトーンとソラリゼーションと言う写真の技法で表現する挑戦を試みた。
すると、建造物個々が古代ローマやギリシャ神話に登場する
得体の知れない生物の化石に見える紛れも無く有機体を実感した。
ガウディー亡くなって84年、ガウディーはサクラダファミリアの設計を
引き受け着工するにあたり完成を見届ける気持ちはあったのだろうか?