日本には世界に誇れる民族衣装「着物」がある。
現在の着物の原型は室町時代までさかのぼる。
着物の歴史は日本の歴史でもあり存在感がある

着物は明治時代に洋服が輸入され以降、一般的に和服と呼ばれ現代に至る。
しかし、現在では和服に対しての馴染みは薄く、
衣服としての位置づけはフォーマルウェアーである。

昭和30年後半以降、着崩れ防止も含み、
ストレートな直線を作り出すことが正しく美しいと進化した。
理想形が「こけし」である。

いにしえの時代、着物はカジュアルであり着付けは自由であった。
たとえば、大正ロマンの美人画に登場する女性は容姿や内面の美しさを持ち、
それぞれの体に合った自然な着方で着物を身にまとっている。
自然な着崩れが色気けとなり味となり、その人自身の表現の一つになる。                    
自由な着付けの身のラインは、有機的な曲線をもち
国際的な美術運動アールヌーヴォーを彷彿させ美しい。

作中で着物をまとう人物はそれぞれ自由に着物を着用し、その愛すべき造形を成す。
写真によって切り取られた永遠の中で、着物は洋風ドレスのようでもある。
日本であって日本ではなく、昔のようで未来的であり、
国籍と時間を超越し不思議な美しい世界感を創る。

着物はあらゆる衣服の造形の中心に位置する物として、
美の模範となり想像力をかきたてる。
全ての光、全ての背景はただ着物が形作る美しい造形のためだけに存在し
耽美的に、時に静かに、時にダイナミックに、
既存の概念にとらわれない着物のポテンシャルに魅了される。